センター試験戦略論

受験勉強やテスト勉強というものには、知識とは別にテクニック・スキルが必要です。

 

たとえばセンター試験形式の英語の問題の点数を比較したときに、英単語を1900語覚えている生徒が、1200語しか覚えていない生徒より低くなる、という現象が起こることがあります。

 

なぜでしょうか。

 

とくにセンター試験で起こりやすいこの逆転現象の分析と対策を、「バドミントンの試合」に例えて考えてみようと思います。

 

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【場面設定】

 

・まず、対戦相手は「高校生(女性)のバトミントン県内1位選手」と設定し、

 

自身を

 

A.

高校生(男性)のラグビー部全国1位主将

(バドミントン未経験)

 

B.

35歳男性、15年近くまともな運動をしていない。

(筋力でも対戦相手に劣っている)

 

の2種類に設定します。

※現時点ではA、Bとも対戦相手に1回も勝てないものとする。

 

・2か月後の勝負で対戦相手から目標点数を勝ち取らなければならず、それまで対戦相手と直接戦うことはできないが、以下のものが自由に使えるものとする。

 

ア.対戦相手の全試合のビデオ

イ.対戦相手と似たレベルの選手との練習試合

ウ.筋力トレーニング器材

 

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ここで、ア~ウの各メリットとデメリットを考察すると、

 

(ア)ビデオ

【メリット】

・限られている時間の中で、『効率的な(or無駄な)練習が何か』を大まかにつかめる。

【デメリット】

・ビデオに映っている動きしか研究できない。

・ビデオだけでは大きなスキルアップ(=頭でイメージした通りに自分の体を動かせるようになること)にはならない。

 

(イ)練習試合

【メリット】

・(筋力が十分にあれば)自分のスキルアップにつながる。

【デメリット】

・(筋力が十分になければ)そもそも体が動かないのでスキルアップにつながらない。

 

(ウ)筋トレ

【メリット】

・(筋力が十分になければ)筋力がないままの場合より得点力は上がる(運も含め)。

【デメリット】

・(筋力が十分にあれば)スキルアップに大きくはつながらない。

 

 

となり、すると目標達成に向けた戦略について下記のようにイメージすることができるようになります。

 

「2か月後の勝負で、対戦相手から目標点数を勝ち取る」という目標を実現するために取るべき戦略は、自身がA(筋力大)かB(筋力小)かによって変わる。

 

※【取るべき戦略の判断材料】

(ア)「対戦相手のビデオ」を見ることは、見るべきタイミングや回数に違いはあれどA、Bともに役に立つと考えられる。

(イ)「練習試合」は、A(筋力大)には有効だがB(筋力小)はいきなりやっても時間の無駄となる。

(ウ)「筋トレ」は、B(筋力小)には有効だがA(筋力大)には時間の無駄となる。

 

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次に、バドミントンの勝負で勝つために必要な数値要素を大まかに「筋力数値」と「スキル数値」の2つに絞り、その2数値の和が大きいほど勝つ確率が高くなると仮定すると、

 

対戦相手は「女性」であり「県内1位」という特徴から、

・「スキル数値」より、「筋力数値」の方が限られた時間内においては早く対戦相手を上回りやすい。

ということが推察できます。

 

また、

・「筋力数値」を先に上げておいた方が、「スキル数値」の上昇スピードも上がる。

ということも推察されるので、以上のことを総合的に考えたベストな戦略は、

 

 

★ 対戦相手との筋力差を見て、自身の筋力が低いほど「筋トレ」比率を高くし、筋力が高いほど「スキルアップ」比率を高くする。

 

と大まかに結論づけることができます。

 

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さて、以上の例え話を冒頭のセンター試験にあてはめるとどうなるでしょうか。

 

もちろん、「対戦相手」は「センター試験」のことであり、

「2か月後の勝負で、対戦相手から目標点数を勝ち取る」とは「2か月後のセンター試験で、目標点数を勝ち取る」ということです。

 

(ア)「対戦相手のビデオ」は「過去問」

(イ)「練習試合」は「模試、類似問題集」

(ウ)「筋トレ」は「単語、文法等の基礎知識」

 

であり、「筋力数値」は「基礎知識量」、

「スキル数値」は「テストのパターン、クセ、問題の解き方などの習熟度」となります。

 

ということで、上の例え話を実際のセンターの話に当てはめなおすと、下記のようになります。

 

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【場面設定】

 

・まず、センター試験は「知識は基礎レベルでよいが、テクニックがやや高度(量が多く時間が短い)」と設定し、

 

自身を

 

A.

2次試験にも対応できる知識をもっている。

(センターの練習は、ほとんどしたことがない)

 

B.

基礎知識もない。

(センターの練習も、ほとんどしたことがない)

 

の2種類に設定する。

※現時点ではA、Bともセンターでの点数は著しく低いものとする。

 

・2か月後のセンター試験で目標点数を勝ち取らなければならず、それまでセンター試験を受けることはできないが、以下のものが自由に使えるものとする。

 

ア.センター過去問

イ.模試、類似問題集

ウ.単語帳、文法書などの参考書、教科書など

 

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ここで、ア~ウの各メリットとデメリットを考察すると、

 

(ア)過去問

【メリット】

・限られている時間の中で、『効率的な(or無駄な)勉強法が何か』を大まかにつかめる。

【デメリット】

・過去に出た問題しか研究できない。

・過去問だけでは大きなスキルアップ(=類似問題でも解けるようになること)にはならない。

 

(イ)模試、類似問題集

【メリット】

・(知識量が十分にあれば)自分のスキルアップにつながる。

【デメリット】

・(知識量が十分になければ)そもそも解答・解説の意味が理解できないので、スキルアップにつながらない。

 

(ウ)単語・文法など暗記

【メリット】

・(知識量が十分になければ)知識量がないままの場合より得点力は上がる(運も含め)。

【デメリット】

・(知識量が十分にあれば)スキルアップに大きくはつながらない。

 

 

となり、目標達成に向けた戦略について下記のようにイメージができるようになる。

 

「2か月後のセンター本番で、対戦相手から目標点数を勝ち取る」という目標を実現するために取るべき戦略は、自身がAかBかによって変わる。

 

※【取るべき戦略の判断材料】

(ア)「過去問」を見ることは、見るべきタイミングや回数に違いはあれどA、Bともに役に立つと考えられる。

(イ)「模試、類似問題集」は、A(知識あり)には有効だがB(知識なし)はいきなりやっても時間の無駄となる。

(ウ)「単語・文法などの暗記」は、B(知識なし)には有効だがA(知識あり)には時間の無駄となる。

 

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次に、センター試験で得点するために必要な数値要素を大まかに「知識(単語等)数値」と「スキル(解法習熟)数値」の2つに絞り、その2数値の和が大きいほど得点確率が高くなると仮定すると、

 

センター試験は「基礎的な知識をメインに問う試験」であり「クセがある(量が多く時間が短い)」という特徴から、

・「スキル数値」より、「知識数値」の方が限られた時間内においては早くセンターレベルにまでもっていきやすい。

ということが推察できる。

 

また、

・「知識数値」を先に上げておいた方が、「スキル数値」の上昇スピードが上がる。

ということも推察されるので、以上のことを総合的に考えたベストな戦略は、

 

 

★ 「センターレベルに必要な知識量」と「自分の知識量(現時点)」の差を見て、自身の知識量が少ないほど「基礎知識暗記作業」比率を高くし、知識量が多いほど「センター形式の練習」比率を高くする。

 

と大まかに結論づけることができる。

 

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冒頭の、1900語まで英単語を覚えた生徒より1200語程度の生徒の方が得点率が高かったのは、後者が「センター形式の練習」を膨大にやっていたのに対し前者はほとんど「センター形式の練習」をやっていない段階であったために、「知識数値」と「スキル数値」の和で後者が勝った、と大まかに分析することができます。

 

あるいは、時間ギリギリまで基礎知識づけを避けようとする「短期集中タイプ」がもしかしたら検討しそうな戦略でもありますが、

基礎知識があまりに不足している状態では、「センター形式の練習だけで何とか成績を上げよう!」という戦略に走るのは、貴重な時間を無駄にする非常に危険な戦略となる可能性が高い、と言えそうです。