※写真は、高3生KO君からの質問の解説
3つ前のブログで、
・成績アップという『結果(or目的)』に対し、『苦労・苦痛』という『外してもよい足かせ』を(学生が)外さない行動の背景
の4番目に
・『(足かせを)外す行為』が所属集団の中で自分の『集中すべき戦略』ではないため、『外す行為』に興味をもてない
というものを挙げました。
今回はここを含めいろいろ掘り下げていきます。
※前回同様、前提知識の解説等を含め、順を追って掘り下げます。
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【伽藍とバザール】
橘玲氏の著書『人生は攻略できる』に、「伽藍」と「バザール」という用語が出てきます。
下記、それら用語に関する引用部分です。
(引用文)
『伽藍というのは、お寺のお堂とか教会のように、壁に囲まれた閉鎖的な空間だ。
それに対してバザールは、誰でも自由に商品を売り買いできる開放的な空間をいう。
《中略》
バザールの特徴は、参入も退出も自由なことだ。
《中略》
バザールでは誰でも商売を始められるわけだから(参入障壁がない)、ライバルはものすごく多い。ふつうに商品を売っているだけでは、どんどんじり貧になるばかりだ。
これがゲームの基本ルールだとすると、どういう戦略がいちばん有効だろうか。それは、「失敗を恐れず、ライバルに差をつけるような大胆なことに挑戦して、一発当てる」だ。
《中略》
それに対して伽藍の特徴は、参入が制限されていて、よほどのことがないと退出できないことだ。
《中略》
新しいライバルが現れることはないのだから、競争率はものすごく低い。どこにでもある商品を売っているだけで、とりあえずお客さんが来て商売が成り立つ。
これがゲームの基本ルールだとすると、どういう戦略が最適だろうか。それは、「失敗するようなリスクはとらず、目立つことはいっさいしない」だ。』
(引用終了)
著書ではこの後、
伽藍の典型は日本の「学校」や「会社」であり、伽藍の習熟者だらけの日本社会では、ネガティブゲーム(※1)で競争するのは最悪の戦略である
と話が進んでいきます。
※1「ネガティブゲーム」とは
上記「失敗するようなリスクはとらず、目立つことはいっさいしない」戦略のこと。
(1つ前のブログで書いた『ゼロサム・テイカー』寄りのゲームと考えられる)
対義語は「ポジティブゲーム」で、
上記 「失敗を恐れず、ライバルに差をつけるような大胆なことに挑戦して、一発当てる」 戦略のこと。
(同じく1つ前のブログで書いた『プラスサム・ギバー』寄りのゲームと考えられる)
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【スクールカースト】
スクールカーストについて、プレジデントオンラインの記事を下記にて一部引用します。
引用元:
"教室カースト"底辺の子の親がすべきこと | プレジデントオンライン
https://president.jp/articles/-/28092
(引用文)
『「スクールカースト」という言葉がある。
デジタル大辞泉の解説には「学校のクラス内で、勉強以外の能力や容姿などにより各人が格付けされ、階層が形成された状態。
階層間の交流が分断され、上位の者が下位の者を軽んじる傾向があることから、いじめの背景の一つともみなされている。
インドのカースト制になぞらえた語。学級階層」とある。
要するに「教室内ヒエラルキー」のことである。
《中略》
このカースト序列は最初の1カ月間でほぼ決定し、よほどのことがないとその1年間は序列が変わらない。
《中略》
加えて、教室には「キャラ強制圧力」なるものが存在し、それに違和感を覚えたとしても、一度、キャラが固定化された場合、「キャラ換え」は簡単にはできない。』
(引用終了)
このスクールカーストの記事と橘玲氏の著書の考えを合わせると、
「伽藍」であり「スクールカースト」も存在する学校で、学生がとると考えられる戦略は、
・「悪評を立てない」戦略(ネガティブゲーム)
や、
・「キャラを立てて自身を目立たせる(カースト位置の維持向上)」戦略
となります。
そして、この後者の「キャラを立てて自身を目立たせる」戦略ですが、橘氏によると
「伽藍(学校の自分のクラスなど)」の中で、うまくキャラを立てるために有効な戦略は、
・「自分が一番得意なことに集中する」
となるのだそうです。
※なぜなら、同じキャラが2人いると目立てなくなるから。
そしてその結果、
『それ以外のことには、興味がなくなる』
となるそうです。
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「成績アップという『結果(or目的)』に対し、『苦労・苦痛』という『外してもよい足かせ』を外さない行動の背景」
として
『(足かせを)外す行為』が所属集団の中で自分の『集中すべき戦略』ではないため、『外す行為』に興味をもてない。
と述べた根拠は、以上です。
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では次に、もう少し細かく設定してみます。
たとえば、
・人は、『伽藍』であり『スクールカースト』のある学校(or自身のクラス)の中で『自分と同じ労力で、自分より高い成績を出せる人』が半分以上(あるいは3分の2以上)いた場合、『勉強すること』に対し『戦略的に(or力学的に)』興味をもてなくなる可能性がある。
という構造があると仮定します。
となると、教える側が「成績が芳しくない学生の成績をアップさせる」を目標にしているような場面では、「この構造を把握した上で効果のある指導」をする必要が、教える側に出てくるでしょう。
ノーベル経済学賞を受賞し、AI研究の創始者の一人となった認知科学者でもあるハーバートA.サイモンは、「問題解決」について
「問題解決は目標の設定、現状と目標(あるべき姿)との間の差異(ギャップ)の発見、それら特定の差異を減少させるのに適当な、記憶の中にある、もしくは探索による、ある道具または過程の適用というかたちで進行する」
と述べています。
「問題発見」とは、「あるべき姿」と「現状」の「ギャップ」の構造を把握すること。
そして、「ギャップ」をもたらすものの本質に迫ることが、「問題解決」への道筋となります。
「正確な問題発見さえできれば、問題の半分以上は解決する」
と言われる所以です。
上記構造下にいる学生への効果的な指導法の考察については、今回はいったんここまでにします。
今後も引き続き、可能なかぎり「詳細な現状分析」や「正確な問題発見」を進め、考察を深めていきます。
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京都でも最古の部類に数えられ、お酒の神様として知られる松尾大社にて。
関西でも随一とされる山吹の名所ということで、山吹まつりに合わせ先週行ってきました。
スカッと晴れた日で山吹もキレイに咲いており、とても良い休日でした。
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次に、もう一点。
高校に入るまではとくに意識しなくても問題なかったマインドかもですが、義務教育を終え同年齢で働き始めている人もすでに出ている高校生以降で、今回もぜひ鍛えていってほしいマインドについて書きます。
学生ステージを卒業すると、「お客様に対し『より付加価値の高い商品・サービス』を提供することで収入を得るステージ」へと、大多数の人が入っていくことになると思います。
つまり、学生ステージ以降は「伽藍」と「バザール」では「バザール(自由競争)」の方に入る可能性が高く、そしてその可能性は今後もさらに高くなっていくと考えられます。
なぜなら、YouTube、Facebook、Instagram等の普及により個人が活躍できるようになった結果、現時点でも商品やサービスの品質が日に日に向上しているから。
よって、たとえ現在は「伽藍」に閉じ込められている学生であっても、「バザール(ポジティブゲームやプラスサムゲーム寄りの世界)」の攻略努力機会を削ってまで「伽藍(ネガティブゲームやゼロサムゲーム寄りの世界)」の攻略努力をするのは、得策ではありません。
ましてや、現ステージだけを判断材料にして「『伽藍』の攻略こそが社会の攻略法だ」などと見誤らないように注意してほしいです。
たしかに、前回のブログでも書いたように「ギバー」は「テイカー」に搾取されやすいため、学校などの「伽藍」の中では「テイカー行動(マウンティングなど)の有効性」が非常に強力に映るかもしれません。
が、「伽藍」と「バザール」では戦い方が全く変わります。
「バザール」である一般社会では、テイカー行動は有効性が小さくなるばかりか、自身にとって有害にすらなりうるのです。
たとえば、「社会に出て『高校時代までのスクールカースト』が逆転した」という現象。
伽藍とバザールで戦い方が変わったことが原因で『高校時代までのスクールカースト』が逆転したケースもあるということは、特段想像に難くないでしょう。
また、前回のブログで挙げた「塾のアルバイトの例」なども、「伽藍とバザールでは戦い方が変わる」「バザールではテイカー行動の有効性が小さくなる」の具体的な根拠といえます。
以上を踏まえた上で、学生たちにぜひ身につけていただきたい考え方の具体例を、今後もいくつか挙げていきたいと思います。
今回挙げるのは
・たとえば相手の「マウンティングが上手か下手か(orそもそもしてこないか)」だけで、相手の「社会的価値」を見誤らないように注意する。
「マウンティングの巧拙」は、
テイカー環境(or伽藍)での「力量」。
「社会的価値」は、
ギバー環境(orバザール)での「力量」。
両者は別物です。
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終身雇用崩壊やAIの台頭など、先の見えない時代を塾生たちがたくましく生き抜いていくためにできるサポートを、今後も考えていきます。